シリコン結晶中の炭素濃度の赤外吸収による測定法の高感度化と実用化


初めに
シリコン結晶中の軽元素不純物である、酸素、炭素、酸素は、結晶の歩留まりばかりでなく、シリコンデバイスの性能を左右します。
そこでこれらの濃度はシリコン基板の重要な仕様となっています。
これらの濃度は赤外吸収法により測定されています。
不純物はシリコン結晶中で、シリコン原子が振動してフォノンと呼ばれているように、固有の振動をしていて、局在振動モードによる赤外吸収があります。
その赤外吸収の大きさは不純物の濃度に比例します。
そこでその吸収の大きさを測ることにより濃度を求めることができます。
シリコン基板の取引において、信頼できる濃度値が必要です。
そのため、測定は公的に定められた測定法規格に従って測定されています。
従って高感度で高精度で実用的な測定法が開発されています。
測定法規格の代表は米国のational Bureau of Standard (NBS)が提供する測定法や材料の公的規格
American Standard for Testing and Material (ASTM)です。
炭素濃度は1970年のASTM123-70(tentative)が最初のようです。
わが国ではそれに倣って、通産省傘下の電子協で規格作りが始まりました。
ほぼ内容ができたときにASTMがそれまでの分散型装置からフーリエ変換型装置への対応のために規格の改訂を目指していることが分かり、
電子協から改定内容を提案し、1990年にASTMF139として制定されました。その後まだ改訂が進んでいません。
現在までに高感度の測定法の開発と普及が進み、改訂作業が進められています。

高感度化の開発と普及のあらまし
2005年頃の電気自動車への移行の本格化において、パワーデバイスのライフタイム制御に照射により準位を形成する方法に炭素が関与していることが次第に明らかになり、シリコン基板の炭素濃度の制御と測定の高感度が始められました。
課題の計画化と対策
シリコンメーカや分析装置メーカーやSIMSと放射化分析を含む分析サービス会社との協力
それらへのフィードバックと普及
測定法規格の改訂
が進められています。
それまでのIC chip全盛時代では、1970年代後半に炭素は欠陥に関与しないことが明らかにされ、濃度測定が実質的にされない時代が続いていました。
以下は応用物理学会における最近までの一連の研究発表の題名で、課題と達成が要約されています。

CZ-Si結晶中の低濃度炭素の赤外吸収測定 05春 29a-ZN-8
同(U) 高精度測定法 05秋8a-ZA-7
(III) 参照試料の作製 08春29p-X-15
(IV)10^14/cm^3台の測定と技術移転 12春 17p-F11-8
(V) フォノン吸収による妨害の対策と規格化の検討 14秋 20a-A20-2
(VI) 5x10^14 cm?3までのSIMS測定と標準試料 2015年春 12p-A18-3
(Z) 第二世代技術による 1x10 14 cm ?3の濃度と1x 10 13 cm ?3の 濃度差の 測定 13p-1E-1
([) 第二世代技術による 1014 cm?3 台の測定と SIMS,放射化 20a-H113-8
(\) 16乗から13乗へ16秋15-A23-11
(a)シリコン結晶中の炭素濃度測定の感度と規格適用濃度と検出下限16秋15-A23-12
(]) 14乗までの測定法 17春14p-F201-13
(b)シリコン結晶中の炭素濃度測定の感度と規格適用濃度と検出下限 (2) 「検出下限」の用法と科学的根拠 17春14p-F201-13
(?)電子線照射による1x1013cm-3までの赤外参照試料とブロックゲージの作製 17秋6p-A503-8
(?)1013cm-3迄の検出と1014cm-3までの高精度測定 17秋6p-A503-9
(XIII)参照試料とブロックゲージとスペクトルと測定プロセスの共有による高感度高精度測定ネットワーク化と実用 17秋6p-A503-10
(XIV)1x1013cm-3までの赤外用人工ブロックゲージの作製と共有 18春8p-D103-22
(XV)1x1013cm-3までの第二世代赤外吸収測定の国際ネットワーク 18春8p-D103-23
(XVI)低温における1x1013cm-3までの赤外吸収測定 18秋19p-131-14
(XVII) 1014atoms・cm-3のポリシリコンの赤外吸収測定18秋19p-131-15
(XVV)赤外吸収とSIMSの相互較正 19春16p-M111-11
(]\) 第二世代赤外吸収測定法の標準手順 19秋 18a-C212-3
(]]) 赤外吸収測定法規格の修正試案 20春15p-D411-5
(]]I) 炭素濃度の低減と測定法の進歩:Carbon engineering 20秋 11p-Z12-17
(]]II) 赤外吸収測定法規格の改訂再開 21春 19a-Z29-9
(23)赤外吸収法のinstrumental detection limitとspectral detection limit 21秋 10p-N203-9

内容を大別すると以下のようになります
参照試料 3,6,11
フォノン吸収の妨害 5
吸収からから濃度への換算係数の較正
感度向上 4,6,7,8,9,10
検出下限 a,b,23
低温 16
ポリシリコン 17
国際ネットワーク 4,13,14,15
SIMSと放射化分析との較正6,8,18
標準手順・規格の改訂 5,19,20,21,22,23
続く