Detection limitについて

2021/08/24-
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目次
Detection limitについて
Instrumental detection limitについて
赤外吸収測定への当て嵌め
Spectral detection limitについて

初めに

化学分析には定性分析と定量分析があります。
定性分析は何があるかを調べ、定量分析はそれがどれだけあるかを測定します。
定量分析では、感度と精度が重要です。感度はどれだけ少なくても測れるか、精度はどれほど正確かです。
感度を表す用語の一つとしていわゆる検出下限またはdetection limitが一般的に使われています。
近年人体に有害な化学物質による環境汚染や、放射能による汚染の問題が深刻になるにつれ、分析の専門家の間で、detection limitの議論が進みました。
そして、化学者の国際学術機関である国際純正・応用化学連合International Union of Pure and Applied Chemistry (IUPAC) においてinstrumental detection limitについて統一見解がまとめられています。これはその名の通り「用いている分析装置がどの濃度まで測れるか」であって、通常使われる「その分析技術の普遍的なdetection limit」ではありません。後者はpositiveなのに対して前者はnegativeな概念と言えるでしょう。
これまで軽元素不純物の赤外吸収による測定法について、detection limitが論じられることはありませんでした。最近測定の専門家やSEMI Standardのメンバーで議論をしています。

Instrumental detection limitについて

これはその名の通り「用いている分析装置がどの濃度まで測れるか」で、標準となる条件で実際に測定したデータから統計学を使って算出します。
IUPACはそれの公式な定義と、標準となる求め方を示しています。
定義
ある物質のblankを測定したときに、得られる測定値
求め方
空の試料を8回測定する。その結果の標準偏差を求める。その3倍をInstrumental detection limitと呼ぶ。
説明
分析装置にはいわゆるnoiseがあって、空の試料を測定しても値が出る。そのため、その値以下の測定結果が出た場合、試料が空であるかどうかが分からない。
統計学では有限の数のデータから無限に測定した場合の測定値を推定する。標準偏差の3倍を超える値は実際に現れる確率が1%以下と予想される。それをその範囲と考えておけば「値の確からしさが99%」ともいう。
そこでこれを定量分析におけるinstrumental detection limitとする。
具体的には、空の試料を8回測定し、その測定値の標準偏差の3倍とする。
以上の考えは、信頼性を重視して、誤りを極力排除しようという考え方で、一つの目安です。
研究開発としては極限まで測ることを考えるので、別の目安が必要です。

Instrumental detection limitの赤外吸収測定への当て嵌め

赤外吸収では、当該不純物以外による吸収の消去のため、測定試料と不純物を含まない参照試料の吸収の二つの差を求める。従ってIUPACの定義は当てはまらず、概念の拡張が必要である。そこで当て嵌めを考える。
Blankの測定の代わりに、濃度の等しい2つの試料の差を測定することが対応するであろう。それ以外は変わらず、差を8回測定して標準偏差の3倍を算出することにする。